成人式には車椅子でも振袖を!
日本人のほとんどが、この日は晴れ着を身にまとい、精一杯オシャレをして地元の市区町村が開いてくれる式典に臨みます。
親なら成人式には愛娘に振袖を着せてやりたいと思うのは当たり前の思いなのではないでしょうか。でも、それが叶わずに諦めているご家族がたくさんいらっしゃいます。
昨年の暮れのこと
当社に一本のメールが届きました。
「体の不自由な娘に振袖をきせて貰いたい」
という、お父様からのメールでした。
成人式といえば、私達着付け師が一年で最も多忙な日であり、圧倒的な着付け師不足となります。私も一年も前から予約があり、ご要望にお応えすることはできませんでした。どの着付師もほぼ毎年、予約でスケジュールが埋まってしまうのです。
市区町村の会館の一室をお借りして「車椅子や寝たきりの体の不自由な新成人の方を対象とした着付けができないか」と公共の施設に提案しましたが、これは特別扱いになるという理由で不可だとのこと。それならば、お嬢様のご自宅にいって振袖の車椅子着付けができる着付師はいないものかと、車椅子着付けを行う協会の本部にあたってみましたが、引き受けてくれる者は1人も居ませんでした。
ご両親の思いを知った今、諦めることなんてできません。なんとかしてあげたいという思いで、こう提案しました。
「成人式より前に、振袖に結ぶ帯を持って来てください。
作り帯を私が結びますから」
千葉から、はるばる奥様が締めた思い出の袋帯を大切に風呂敷に包んで、成増まで来てくださったお父様。約3時間の間、お嬢様のことをお聞きしたり、帯結びのアレンジをあれこれ打ち合わせして、好みの振袖用の帯結びに仕上げ、大事そうに抱えて持ち帰られました。
年が明け、成人の日が終わったある日、一通のメールが届きました。
ご連絡遅くなってしまいましたが、福祉園での成人を祝う会、スタジオでの写真撮影、1/13の成人式の3回作って頂いた母親帯をつけ、振袖を着る事ができました。
いろいろとご対応頂きありがとうございました。娘は年末から振袖を着る事を楽しみにしており成人式も天気に恵まれ暖かく出席できて何よりでした。
写真はスタジオ撮影時にiPadで撮ったものです。
とてもよい記念にすることができました。
おめでとうございます!
美しい晴れ着のお嬢様を目にして、「車椅子着付け師になって良かった。」心の底からそう思った瞬間でした。