2026年8月19日
主役は、子ども。|七五三、お母さんは何を着るか
子どもの支度が決まる。 着物が届いて、写真館の予約も取れて、神社も決まる。
そこで、ふと手が止まる。
——わたしは、何を着よう。
訪問着、付け下げ、色無地
多いのは、この順番。
訪問着がいちばん多く、次に付け下げ。 それから、色無地。
どれも、格としては充分。 迷ったら、手持ちのなかでいちばん改まったものを選べば、まず外さない。
主役は、子ども
華やかな帯結び。 色を重ねた伊達衿。
できるけれど、あえてしない方が多い。
写真に並んだとき、目がどこへ行くか。 そこだけを考えて、一段引く。
「子どもより格を上げない」という言い方をよく見かける。 実際に現場で起きているのは、格の上下というより、この引き算に近い。
帯は、二重太鼓
二重の喜び。 喜びが、重なる。
だから二重太鼓にすることが多いという。
結び方に、意味が乗っている。 知って締めるのと、知らずに締めるのとでは、その日の気持ちが少し変わる。
房は、上を向ける
帯締めの、両端の房。
着付けのあと、その向きを上へ向けて差し込む。
おめでたい日の装いには、上向き。 喜びの気持ちは、天にものぼるから。
悲しみごとの装いには、下向き。 悲しみの涙は、地に落ちるから。
抱っこした拍子に、帯締めが緩むことがある。 直すときに向きを間違えないよう、着付けの段階で伝えておく。
写真を見返したときに、後悔しないために。
抱っこも、しゃがみもする日
七五三は、じっと立っている日ではない。
抱き上げる。 しゃがんで、目線を合わせる。 走り出した子を、追いかける。
着物に慣れていない方には、その動きを見越して着せる。
丈を、少しだけ短めに。 裾を踏まないように。 雨の日も同じで、長すぎると汚れる。
もうひとつ。 下前を巻き込んで着付けると、左足が前に出にくくなる。 歩きにくい。
だから、下前の裾を少しだけ前に折る。 それだけで、無理なく歩ける。
美しさを最優先にするなら、別の着せ方になる。 けれどこの日は、動けることのほうが大事になる。
お父さんと、おばあさま
お父さんがスーツで、お母さんが着物。 問題ない。
一家そろって着物、という家族もいる。 そちらは、そちらでとても素敵。
おばあさまは、洋服の方もいる。 着物で一緒に写真に入る方も、ときどきいらっしゃる。
決まりごとを守る話ではなく、その家族がどうしたいか、という話。
時間は、四十分から五十分
お母さんお一人の着付けで、四十分から五十分。
実際には三十分ほどで仕上がる。 それでも余裕をみて、その時間をいただいている。
当日の朝は、子どもの支度と写真館の時間が先に決まっている。 そこから逆算すると、自分の支度は最後に押し込まれやすい。
早く始める。 それだけで、当日がずいぶん変わる。
スタジオで、家族の支度を断られたら
最近の七五三は、お参りだけではない。 特別な日を写真に残したい、という家族が増えている。
ただ、写真スタジオによっては、主役のお子さんの着付けはしても、ご家族の着付けは承っていないことがある。
そういうときは、出張着付けという方法がある。 キツケデリにご依頼いただければ、ご自宅でお支度ができる。
移動もない。 子どもの機嫌を見ながら、自分の分も整えられる。
引き算のあとに、残るもの
帯結びを控えて、伊達衿をやめて、丈を少し短くする。
削っていった先に残るのは、 子どもの手を引いて歩ける、という一点。
その日、写真の真ん中にいるのは子ども。 けれど、その隣に立つ人の装いも、必ず写る。
昨日より3センチくらい特別な、家族の一日。