2026年9月12日
はじめての、地方への遠征。|岐阜へ、車椅子着付けを届けに
9月6日。いつもの地元を離れて、岐阜へ向かいました。認証福祉車椅子着付け師養成講座のプロコースを、遠く離れた土地で開くのは、私たちにとって初めてのこと。
これまで講座は、こちらの拠点に来ていただく形が中心でした。けれど今回は、私たちのほうから出向く。県境をいくつも越えて、車椅子着付けを、その土地へ届けに行く。小さな団体にとっては、大きな一歩です。
岐阜で私たちを迎え、開催の場をととのえてくださったのは、井出深千認定講師。受け入れの主催として、遠方から来る受講生とスタッフのために、会場を整えてくださいました。この土地に、車椅子着付けを待っている人がいる——その受け皿になってくださる方がいたからこそ、初めての遠征は実現しました。
集まってくださった受講生は、富山、愛知、岐阜から。県をまたいで、それぞれの想いを抱えて足を運んでくださいました。そして、モデルや会場づくり、技術のサポートには、神奈川県横浜市から西山智香認定講師、千葉県船橋市から大野由佳里講師が駆けつけてくれました。東へ西へ、遠く離れた土地から仲間が集まり、一つの講座がかたちになる。その光景そのものが、この一日の手応えでした。
当日の様子から、一場面をご紹介します。
岐阜で迎えてくれた、井出深千認定講師
今回の遠征を、地元・岐阜で受け入れてくださったのが、井出深千(いで みゆき)認定講師です。岐阜県可児市を拠点に、着物ひとすじ十年以上。訪問着や振袖、留袖から車椅子着付けまで、幅広く手がける着付け師です。
井出先生が着物と出会ったのは、幼い頃。日常的に着物を着るおばあさまのそばで育ち、着物は暮らしの中の当たり前でした。結婚と子育てを経て、「もっと深く学びたい」と着付け師の道へ。そして活動の中で「福祉車椅子着付け師」という存在を知り、いてもたってもいられず——好循環きものの会を訪ねて、横浜行きの新幹線に飛び乗ったそうです。その一歩が、今日へとつながっています。
井出先生には、ご家族の介護を通して「社会とのつながりが人を生かす」と痛感されたご経験があります。だからこその願いは、車椅子着付けの認知を広げ、ご高齢の方も、障がいのある方も、もっと社会に参加できるように。その思いを、今度はご自身の地元・岐阜で形にしようとしています。今回、遠くから来る私たちを受け入れ、主催として場をととのえてくださったのも、その延長線上のこと。
各地に、こうして受け皿になろうとする認定講師がいる。初めての遠征が実現したのは、井出先生のような方が、その土地に根を張ってくださっているからです。
講座で学んでいただくのは、車椅子に座ったままの浴衣や袴の着付け、そして寝たままの振袖の着付け。体の状態に合わせて、座ったままでも、寝たままでも、美しく整える技術です。(養成講座を主催しているのは株式会社好循環です。)
「足が悪いから」「車椅子だから」。そんな理由で着物をあきらめてきた方は、日本中にいらっしゃいます。だからこそ、その技術を持つ着付け師が、一つの土地にとどまっていてはいけない。必要としている人のところへ、こちらから出向いていく。今回の遠征は、その最初の一歩でした。
遠くへ行くのは、身軽なことではありません。それでも、県境を越えた先で、受講生の真剣なまなざしに出会えたとき、来てよかったと心から思いました。ここからまた、必要とされる土地へ、一歩ずつ足を延ばしていきたい。
座ったまま、そっと袖を通した一枚。その姿を見て、ご本人も、ご家族も笑顔になる。着付け師の一手が、誰かの一日を、ほんの3センチだけ特別にする。その3センチを、もっと遠くの人にも届けるために——初めての遠征は、私たちにとって忘れられない一日になりました。
車椅子着付けを学んでみたい方、お住まいの地域での出張開催を相談したい方は、認証福祉車椅子着付け師養成講座のページをご覧ください。